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研修医体験記 2020年1-3月

 

 

2020年05月25日


2020年1月から3月まで3ヶ月間に渡って当院の地域医療研修に従事していただいたのは、臨床研修も終了間近の帝京大学初期研修医2年目の先生でした。人と人とのコミュニケーションを大事にしながら、快活に診療を行ってくれました。持ち前の明るさにスタッフはいつも元気をもらっていました。 先生には思い入れのある症例を中心に研修の感想を語っていただきましたので、以下にご紹介します。

 


『斜里国保病院での研修を終えて 〜斜里町で味わった2020の冬を忘れない〜 』


「私は当院で3ヶ月の研修をさせていただきました。まずはじめに申し上げたいことは感謝の気持ちです。関わった地域の皆様、医療スタッフの方々、合地研吾院長、指導医の石岡春彦先生をはじめたくさんの先生方、誠にありがとうございました。おかげさまで医師として、また一人間として成長することができました。

地域医療で経験した笑い、哀しみ、そしてありがとう!

当院ではたくさんの経験をすることができました。
特に印象に残った患者様がいます。Aさんはガンの末期で1年前にあと半年だと他院で宣告されていました。当院に来たのは半年を過ぎてからです。1度目の入院は痛みが強くなり、動けなくなったことでの入院でした。ガンによる痛みがあったにも関わらず明るい声で『おはよう!若先生、元気出して!』と、太陽のように明るく振る舞われていました。ご家族もとても熱心で毎朝、毎晩カステラやいろんな差し入れをし、Aさんを励まし、深い愛情を恵んでいました。
訪室するたびに『よく来たね』と言われ、『オリンピックまで頑張るよ』と張り切っていて、逆に私の方が元気をもらいました。医師たるもの患者さんから元気をもらうなんて、まだまだ半人前だ、そう自問自答を繰り返したことは今となっては懐かしいです。
そして一旦、痛みもよくなり、歩けるようになり退院していきました。
常々思うのは、患者さんの死生観は人それぞれ異なるということです。Aさんは自宅で家族と過ごしたいという希望がありました。
ある方はご家族に迷惑をかけたくないとのことで病院でのお看取りを希望されていました。
この終末期のあり方は患者さんの体調によっても考え方が変わることもあります。
信頼関係を築いた上で、死生観や終末期の過ごし方について都度聞くことは大切だということ。とても勉強になりました
ただ、実際に死生観や終末期の過ごし方について患者さんに聞くことは本当に難しいです。どうやって聞くか、タイミング、その場の雰囲気の作り方など本当に難しいです。
これは今後の自分の課題の一つです。

笑い 訪問診療
Aさんの自宅には訪問診療で行きました。
今度は逆にAさんを元気にするのは私の方だという意気込みで、ハワイの首飾りのレイを首にかけ自宅に突入しました。そしてお揃いのレイを首にかけ、肩を組み、一緒にいた看護師さんに写真撮影をしてもらいました。
そのときの写真は一生の宝物です。

幾度か訪問診療はさせていただきました。Aさんが歩いて、元気にしているだけで溢れる感動と喜びがありました。
がんの終末期だと食欲も落ちます。Aさんは最後まで長生きするんだと食事を頑張って食べていました。その気合いにはいつも感服しておりました。
訪問診療の魅力は、家に行くことで、その患者さんの生き様を肌で感じられることです。これが、自分を奮い立たせます!家での過ごし方がわかれば、さらに進んだ生活上のアドバイスをすることができます。
例えば、一人で生活している高齢者の場合、薬の管理が一人でできないことがしばしばあります。その場合は薬を一包化し、薬カレンダーをつくることは一つの有効手段です。また歩けなかったりする場合は、手すりをつけるなどのアドバイスをすることもできます。家にコンビニの弁当などの空き容器が散乱していて、栄養に偏りがある場合は、地域の食事配達サービスを利用することを進めるなどもできます。
病院で見る患者さんはその微々たる一部分でしかありません。家での表情と病院での表情は全く異なります。その人の生き様や、価値観について知ると、ケアを行うことのモチベーションをぐっと高めることができます。

哀しみ 
当院では当直業務もしました。
朝4時に痛みが強くなり動けなくなったということで、Aさんが救急車で搬送されました。
そのとき当直していたのは私でした。指導医の先生から『バイタルはどう?何が原因で動けなくっているのかな?』とご指導を受けつつ、自分の頭の中ではぐるぐると、いろいろな思考がまわりばたばたしながらも、なんとかこれは入院必要だと結論を導きました。
2度目の入院は前回と異なり、ガンはかなり進行し、以前にもあった骨への転移は更に大きくなっていました。動けなくなった原因はこの骨への転移でした。寝返りをうつだけでもA
さんは激痛を訴えていました。骨への転移の痛みは激痛です。いろいろな鎮痛薬を調整しながら、疼痛の緩和をしました。いろいろな薬剤の選択肢について考えながら、指導医の先生方と相談して鎮痛薬を選びました。
患者さんの最期に携われることは、本当にありがたいことです。私は最期=人生のゴールだと思っています。人生のゴールのサポートをできることは、喜びでしかありません。人生のゴールテープをその人の望み通りに切ってもらいたい。そのためには、願いを傾聴し、心と身体をできる限り良くすることが私たちの務めなんだと強く感じました。

Aさんは家族に囲まれて天国へと旅立たれました。Aさんのおかげで私は成長することができました。また自分の医療の原点を見るけることができました。

ありがとうございました!
Aさんと出会い私はたくさんのことを学びました。
寄り添うこと、手を握ること、笑顔で挨拶すること
これだけで患者さんの心をほっとさせることができます。
もちろん大前提として自分のできる医療のアップデートと向上は重要です。自分の医療のレベルが患者さんを安心させることは言うまでもありません。
自分の行う医療に加え、患者さんに寄り添った医療、この両輪があって患者さんを安心させ、いい医療ができるのではないかと思います。
今後私は日本や世界中の地域医療に携わりたいと考えております。医療者の言葉や行動は患者さんや、地域に大きな影響を与えます。患者さんに寄り添うこと、自分のレベルアップを両輪にして今後は医師として働きたいと思います。言うは易く行うは難し。常に意識して行っていきたいと思います。
今後の自分の医療の原点にもなったAさんとAさんのご家族との出会い、そして斜里国保病院には感謝の気持ちしかありません。本当に自分の原点を作ってくださり本当に本当にありがとうございました。」


 
 これからのますますのご活躍を期待しております。

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